看護師 過去問
第114回
問236 (午後 問116)

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問題

看護師試験 第114回 問236(午後 問116) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文を読み、問いに答えよ。
Aさん(65歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。友人の死去後、食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。心配した夫に連れられて精神科外来を受診したところ、うつ病(depression)と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>と不眠時の睡眠薬が処方された。夫から精神科外来の看護師に「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。
Aさんの症状は半年ほどで落ち着き、夫との散歩や料理を楽しみ、特に問題なく過ごせるようになった。精神科受診を終了して1年後、Aさんは再び家にこもりがちになった。夫の話では、急に料理の作り方や人の名前を何度も確認するなど、家事に時間がかかるようになった。Aさんは「何もできないと思っているでしょ」と、ささいなことに怒ったり、急に泣き出すことが増え、夫と一緒に精神科外来を再受診した。頭部MRI検査の結果、多発性脳梗塞がみられ、血管性認知症(vascular dementia)と診断された。Aさんは「自分が認知症(dementia)なんて信じられない。もう治らない」と話した。
Aさんに認められるのはどれか。2つ選べ。
  • 感情失禁
  • 観念奔逸
  • 強迫行為
  • 心気妄想
  • 実行機能障害

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この過去問の解説 (2件)

01

正解は、「感情失禁」と「実行機能障害」です。

 

Aさんは、うつ病の症状が落ち着いた1年後に、

多発性脳梗塞による血管性認知症(vascular dementia)と診断されました。

血管性認知症では、

感情失禁や実行機能障害が特徴的な症状としてあげられ、

症状は段階的に進行します。

選択肢1. 感情失禁

正しい解答です。

感情失禁とは、些細な刺激で泣く、怒るなど、

感情をうまくコントロールできないことをいい、

大脳の前頭葉が障害されることにより起こります。

Aさんの、「ささいなことに怒ったり、急に泣き出すことが増えた」

という情報が、感情失禁に当てはまります。

 

 

 

選択肢2. 観念奔逸

誤った解答です。

観念奔逸とは、双極性障害の躁状態などでみられる思考の障害です。

様々な考えが次々と湧いてきて、多弁になりますが、

話がまとまらず、話の関連性が乏しくなります。

血管性認知症ではみられない症状です。

選択肢3. 強迫行為

誤った解答です。

強迫行為とは、強迫性障害でみられる症状です。

強迫観念に伴う不安から、繰り返し行う行為のことで、

無意味と分かっていてもやめられません。

Aさんにはみられていない症状です。

選択肢4. 心気妄想

誤った解答です。

心気妄想とは、うつ病でよくみられる症状です。

自分が重病であると思い込む妄想であり、

訂正困難で、日常生活に支障をきたします。

Aさんにはみられていない症状です。

選択肢5. 実行機能障害

正しい解答です。

実行機能障害とは、高次脳機能障害の一つで、

認知症の中核症状としてみられ、

計画・判断・段取りなどの能力が低下します。

Aさんの、「急に料理の作り方や人の名前を何度も確認するなど、

家事に時間がかかるようになった」という情報が

実行機能障害に当てはまります。

まとめ

血管性認知症のAさんに認められるのは、

「感情失禁」と「実行機能障害」です。

この2つは、

多発性脳梗塞による血管性認知症の特徴的な症状です。

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02

結論:感情失禁 と 実行機能障害 がみられます
Aさんは多発性脳梗塞による血管性認知症と診断され、怒りやすさ・突然の泣き出し、家事に時間がかかるといった変化が現れています。

これらは脳血管障害でよく見られる 感情失禁実行機能障害 の特徴に合致します。

選択肢1. 感情失禁

脳梗塞後は感情を抑える前頭葉の働きが弱くなり、ちょっとした刺激で泣いたり怒ったりしやすくなります。

Aさんが「ささいなことで怒る・急に泣く」と訴えており、典型的です。

選択肢2. 観念奔逸

次々とアイデアが浮かび話が飛ぶ躁状態の症状です。

Aさんはむしろ活動量が低く、当てはまりません。

選択肢3. 強迫行為

不安を和らげるために同じ行為を繰り返す症状で、料理手順や名前を確認するのは記憶低下のためであり、儀式的行為ではありません。

選択肢4. 心気妄想

ありもしない重病を確信する妄想ですが、Aさんの「治らないかも」という発言は診断を受けた直後の不安であり、現実を大きく逸脱してはいません。

選択肢5. 実行機能障害

計画を立てる・順序立てて作業する脳の力が落ち、家事に時間がかかる、段取りがうまくいかないなどが起こります。

料理の手順を何度も確認する行動がこれに相当します。

まとめ

感情失禁…前頭葉のコントロール低下で感情があふれ出る。

実行機能障害…段取りや優先順位が付けにくく日常動作が滞る。

いずれも血管性認知症で多い症状なので、家族には「症状であってわざとではない」ことを説明し、環境調整やリハビリの導入を検討することが大切です。

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